1: FASSを導入した背景と経緯は?
1: デファクトスタンダードに照らし合わせた教育目標設定に効果的と判断
当社はYKKグループの管理系業務を集約するシェアードサービス会社として、高度な専門性に裏付けられた高効率・高品質のサービスをグループ各社に提供することを求められています。さらに、グループの管理系人材を育成する役割も担っています。
この二つの要求を満たすために、従来のOJTを中心とした教育だけでは「体系化しづらい」「個人差やバラつきが生じる」「業務処理に偏りが生じる」といった問題点がありました。
そこで、デファクトスタンダードに照らし合わせて経理人材の教育目標を設定するとともに、OJTに加えてOFF JTで人材教育を補完していくためのツールを探していたのです。そんな頃に出合ったのが、「経理・財務サービス・スキルスタンダード」に準拠した実務検定、FASSでした。
2: FASSの導入対象(受験対象)とその狙いや教育体系の位置づけは?
2: FASS導入を機に、様々なOFF JTを増やす取り組みが盛んに
2006年の初受験では71名が受験。以後、財務・経理部門のスタッフを中心に毎年受験を続けています。初回は世の中の基準に照らした各人のスキルレベルを把握してもらうのが目的でしたが、その結果は、残念ながら期待したほどではありませんでしたね(笑)。
ただし、受験者は自身のスキルレベルを客観的に把握でき、各人がステップアップするための道筋をしっかりと展望できたと思います。スタッフのモチベーションアップがかなり顕著に見られましたから。
FASSを基盤としたOFF JTの機会も増やしています。例えば、YKKグループの財務・経理スタッフなら誰でも参加できる「経理スキルアップ塾」という取り組みをスタート。FASSを目指すレベル別に学べる講座を用意するなど、その後もFASSをベースとした様々な知識、スキル習得の場を構築しています。
3: 対象ごとに要求するFASSのレベルは?(昇格条件など処遇とのリンクもあれば)
3: FASSの結果はあくまでも“要求レベル”。人事の判断に活用することはない
入社3年未満の社員は重点教育対象者として、取得ランクに関係なく継続受験を義務化。自身のスキルチェックと目標管理に活用してもらっています。また、実務の経験値に応じて点数が上がっていくという認識の下、Bランク取得後は任意受験としています。
受験後、本人の了解を取ったうえでスコアとランクを申告してもらい、全体の知識とスキルのレベルをモニタリングしていますが、現在では、スタッフの80%が設定した目標に到達しています。やはり継続は力なり、ということですね。
ちなみに、YKKグループには「実力等級」という考え方があります。これは、それぞれの職種に応じた実務能力の等級で、経理の業務職群ではC1~C6までの6等級。その等級別に処遇が決まるという仕組みです。各等級にFASSの要求レベルを設定してはいますが、あくまでも目標値であって、スコアを人事の処遇などに使うことはしていません。人事評価は、組織目標に紐づいた各自の成果目標の達成によって判定されています。
4: 今後の教育上の課題は?
4: 業務の標準化、効率化に、FASSの継続的な受験は欠かせない
これまで、のべ500名を超える社員が受験しました。昨今、FASSの教材、テキストツールが普及していますが、FASSはあくまで実務能力向上のために活用されるべきであり、スコアアップのために学習しても意味がないと考えています。
当社では2012年に会計システムを更新しましたが、FASSを基盤に置いて業務とシステムを設計し、業務の標準化、効率化を推し進めています。だからこそ、デファクトスタンダードな経理知識の全体への浸透は欠かせません。今後も、FASSの継続的な受験をとおして、改革・改善マインドを持った経理財務スタッフを育成していきたいですね。